*大げさなタイトルだが、今回の内容はほとんどは私のグチである。だから本当に時間を持て余してどうしようもない人だけお読み頂きたい。
弟が結婚する。それ自体はおめでたい事である。両家の顔合わせや挨拶も恙無く進み、後は結婚式だけである。兄としてはうれしい限りである。季節は春に向い、少しずつ暖かくなっていく。穏やかな春は物事の始まりを予感させる季節でもある。そんな時期に、ついに弟も家族を持つのかと思うと感慨深いものがある。
しかし、ここで私に思ってもみない、重大すぎる問題が勃発する。いや、「思ってもみない」と言えば嘘になる。心のどこかで危機感を感じていたが、気付かないふりをしていたのだ。もしかしたら美術系の大学出身、在籍の方にはよくある事かもしれない。
俗に言う、「◯ ◯作って」問題である。これは特に結婚式関係で多い。
「ウエルカムボードをな、作って欲しいねん!」とか「メッセージカードをデザインしてほしいねん!」とか、何故か美術系、というだけで周りから言われることが多い。今回私が受ける依頼は「席次表」だそうで、それは一枚一枚配るという物ではなく、お越し頂いた皆様全員がそれを見る大きな物を私が1つ作り、それを会場に設置するということらしい。それを告げられた時、私は曖昧なつくり笑顔を浮かべながら、何とか断れないかと必死に考えていた。
「断らんとそれくらい作ったれや!」と思う方も多いだろう。何を言っても慶事である。出来るなら、私も快く引き受けたい。しかし。
もし、これを読んでいるあなたのご家族、友達に藝大美大の人が居たとして、この手のものを頼みたいと思っているのなら、まずはその人の所属学科を確認すべきである。その人が「美術学科」なのか、「デザイン学科」なのかは、この問題において非常に重要である。
なぜなら美術学科に属する人の多くは、デザインが出来ない。意外かもしれないが、事実である。
私は美術学科出身である。もちろん私も出来ない。なぜなら美術学科は「絵」を描く学科だからである。
「絵画」も「デザイン」も似たようなものじゃないん?と思う人も多い。本当に多い。しかしこれはあの有名な将棋マンガ、「3月のライオン」と「月下の棋士」くらい違う。
この2つのマンガを読んで知っている人なら、将棋がテーマってだけで全然ちゃうやん!別物やん!と思う事だろう。そう、絵画とデザインは基本別物である。
もう少し例を出せば、数学と物理、野球と水球、麻雀とドンジャラくらい違う。そもそもルールそのものが異なる、全く別のものなのだ。全く関係ないが、私は哭きの竜も好きである。能條純一のファンなのだ。
私は折に触れ、「美術」と「デザイン」の違いを周囲には出来るだけ丁寧に伝えてきた。しかし全く伝わっていなかった。しかも家族に。
こういう不幸を連鎖させない為にも、ここで「絵画」と「デザイン」の作り方の差をはっきりさせたい。本来は中学校や高校で、この程度の差は理解できるようにカリキュラムが組まれるべきだが、「図画工作」や「美術」で一つに括ってしまう学校では、本当に表面的な事しか教わらない。きっと教師も分かってないことすら分かっていない。
「車」を例にとって説明しよう。
車をデザインしたい時、まず決めなければならないのは「何に使われるか」という部分である。いっぱい荷物を乗せて配達に使いたいのに、荷室が小さければ使用目的と合わない。目的に合致するように、車自体を大きくし、荷物を積めるスペースを確保しなければならない。また、荷室を広く効率よく使用する為には、車高は高く、見た目は四角くなっていく。
反対に、カーレースで使うような速い車の場合は、コーナーで姿勢を安定させるために車高は低く、空気をスムーズに受け流すため、外見は滑らかになっていく。
ここで重要なのは、デザインは物理法則を無視出来ないので、「荷物は一杯積めるけど、めっちゃ速く走れる車」は作る事は出来ない。論理パズルが上手く組み上がらないのである。考えればすぐ分かるが、荷物を一杯積んで高速コーナーに突っ込めば横転するのみである。
逆に、「絵画」であれば、車の使用目的なんか気にする必要はない。荷物が一杯詰めて、めっちゃ速く走れる車だって「絵」にするのは簡単である。空だって飛べるし、なんなら光速も超える。そんなの作者の設定次第である。
「デザイン」はどうやっても現実とのリンクを外せないが、「絵画」は簡単に現実と切り離せる。もっと言えば、「デザイン」にはクライアントが居て、目的があり、予算内でその目的を達成する必要があるのだ。先述の配達車が、荷物は一杯積めるけど、車の価格が4000万だったら、とてもじゃないがペイ出来ない。その為に、デザイナーはまず前提条件を整理する。車の例でいうと、どれくらいの市場規模で、競合商品にはどういった物があるか、ターゲットはどういう層になるか、そういった部分を整理していくのである。ちなみにその商品やサービスを利用するもっとも典型的なユーザー像をペルソナと呼び、詳細なペルソナを設定した上でデザインは行われる。それは性別や年齢はもちろんの事、職業や性格、果ては家族構成や収入まで設定し、デザインは設計されていくのである。
話が大きくなった。席次表の話である。あくまで絵画が専門の私が、どれだけの苦行のもとデザインに似ているが決定的に違う何か、を行い、席次表を制作したのか。それは次回に続くのである。










